平成29年度までの精神保健福祉法の改正の流れをまとめてみた

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精神保健福祉法の改正については、話がぐちゃぐちゃになっていて、よくわからないという人も多いと思うので、平成26年の法改正からの流れを簡単にまとめてみたいと思う。

平成26年 精神保健福祉法改正

この時の目玉は「保護者制度の廃止」「医療保護入院者の退院促進の位置づけ」の2点。
これまで、医療保護入院という強制入院を行う際は、精神保健指定医による判断と保護者による同意があって成立するとされていたが、この保護者に求めるものが精神障害者に医療を受けさせる義務とか財産の保護など、かなり厳しい内容だった。その保護者の規定を廃して、医療保護入院をする際に「家族等」が同意すれば入院は成立するとし、これまで実際に保護者としてその役割を担ってきた精神障害者の家族の負担を軽減するという内容だった。

もう1点は医療保護入院者の退院促進。医療保護入院となった精神障害者には入院直後に「退院後生活環境相談員」という退院支援の担当者がつき、退院に向けた支援をすぐにでも受けることができるという仕組みが新しく導入された。

これらを軸とした改正があり、あわせて、次回の法改正までに「良質かつ適切な精神医療に確保」について指針をまとめ、それを踏まえた法改正をすることになった。

当初はそれを受けて、入院治療や地域精神医療についての議論が行われていたがそんな時に二つの大きな事件が発生し、議論が全く違う方向に進展することになった。

平成26年の法施行から法案ができるまで

今回の精神保健福祉法の改正に大きな影響を与えた二つの事件とは、精神保健指定医の不正申請事件と津久井やまゆり園事件である。

精神保健指定医の不正申請は、聖マリアンナ医科大学の精神科教室において精神保健指定医の資格取得に必要なレポートの内容に不備・不正があったとして指定医資格の取り消しがあった。その後、過去のレポートをチェックし、全国の指定医のうち相当数の資格を取り消した。
この一件があり精神保健指定医資格について、法改正にあわせて議論されることになった。

そして津久井やまゆり園事件である。夜間、知的障害者施設に元従業員が侵入し入所者を大量に殺害したという事件。その犯人が犯行前に精神科に措置入院していたということで、にわかに措置入院制度の在り方が法改正の目玉の議論になってしまった。

さらには、この措置入院についての判断をした指定医が不正申請で資格を取り消された医師だったりと話がどんどんとややこしいことに。

こういった事件を経て、良質な精神医療に関する議論はは措置入院制度の改正が主な議題に移っていき、当初の姿とはかなり違った議論がされることになる。
有識者会議ではやまゆり園事件と措置入院制度を直接的に結びつけることの是非が議論されたというが、出席者の意見はあまり反映されず、結論ありきの議論であったと参加した精神科医がコメントしていたとうわさで聞いたことがある。それだけ、厚労省も前のめりになっていたようだ。

そういった議論を経て厚労省から法案が提出された。措置入院患者について、退院後のフォローを行政主体で行っていくことが盛り込まれた.。
問題となったのは、措置入院後に入院を決定した自治体が中心となって開催するという担当者会議の在り方。警察が出席することや当事者の参加に関する規定が弱いことなどが批判の対象となった。特に、措置入院などを犯罪防止目的に運用するのではないかとの懸念が野党から示されたほか、主要な精神保健関係団体からの反対もあり、法案の国会審議はとん挫し、2017年度中の成立が困難になり、決着は本来ならば法律が施行されていたはずの2018年度にずれ込むことになった。本来ならば2017年秋の国会で審議されるはずであったが、衆議院議員のあおりをうけて審議には至らなかったとも聞いている。

以上が2018年2月時点での大まかな精神保健福祉法改正の流れである。

措置入院というのは自傷他害のおそれのある精神障がい者に対して行われる入院治療の一環であり、犯罪防止が目的ではない。治療が目的となるのだが、それがおろそかになっている。その点をよく踏まえてこれから先の動きにも注視していきたい。

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